2013 年度後期前半のHコースゼミ、テーマは「iPad の教育活用 : 実際にやってみよう!できるようになろう!」は、2013/12/01 の方法研秋合宿発表会で、研究室内部の人々に向けて、これまでの成果をまとめて発表しました。成果と発表の様子を数記事に分けて載せます。
前記事: 秋合宿:「iPadの教育活用」発表の様子と成果まとめ (3/4)
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6. これまでにあったトラブルと、その対処について
- iPad画面がスクリーンに映らない
iOS7が映りにくい場合が多い。映らない際は、一度 iPad 自体を再起動すると回復する。 - Paintoneの使用時に音が鳴らない
iPad自体がマナーモードであると、iPadの音量を上げても、プロジェクターの音量を上げても、音が鳴らない。
プレゼンテーションをする際は、マナーモードになっていないかを確認することも大切である。 - ムービーをプロジェクターに映す際には時間がかかる
ムービーは AppleTV に転送されるのに時間がかかる。転送がムービーの半分以上まで行われなければ、ムービーの再生が始まらない。
これは仕方がないので、トークでつなぐしかない。長いムービーであればあるほど時間がかかるので、以下のような対策が必要。
(A) 長いムービーは、発表前に読み込ませておき、プレゼンテーション開始直後に紹介するなど、発表順序の戦略を前もって立てておく。
(B) ムービーははじめから短く分けて撮影する。長いムービーを作らない。 - 写真をカメラロールなどから表示して AppleTV 経由でプロジェクタに投影するとき、写真の拡大縮小ができない
詳細不明だが、自動的にスライドショーのようなモードに入ってしまっていることが原因。
このモードでは写真の縦横が自動的に判別されて、iPadの縦横にかかわらず、横長のプロジェクタ画面に合った方向で表示されるなどの利点もあるが、ピンチ操作による拡大縮小ができない欠点がある。
このときは、一度「編集」ボタンで写真の編集画面に入り、「キャンセル」で何も編集せずに戻ると、先ほどのモードが解除され、ピンチ操作による拡大縮小ができるようになる。
このまま次の写真を表示しても拡大縮小ができるモードのままだが、写真一覧に戻ってまた別の写真を選んで表示させると、また先ほどのモードに入ってしまう。
面倒だが仕様のようである。
7. 広重講評
当ゼミとしては、久々に「時流モノ」のテーマで、こちらとしてはかなり思い切った投資(^^;)をもって望んだが、学生たちも大いに盛り上がり、期待以上のアウトプットを出してくれた。
細かい点はいろいろと不正確さがあり、またこの「道具」を使った中身(=授業内容)自体にもいろいろとご意見があるとは思うが、今回は「道具」に焦点をあてた、限られた発表時間に合わせた内容ということで、ご容赦いただければ幸いである。
有料のアプリもいくつか買えるように準備をしたが、ほとんどが無料のアプリでなんとかなった。
これらのアプリは学生が自主的に探し出したものがほとんどで、広重はあまり関与していない。これはなかなか実現できないことである。
合宿およびそれに至る毎週のゼミのなかで、引っかかってきたことを、今後に向けての考察事項として、紹介する。
このような実演を中心とした発表では、どうしても「派手な動き」のある「凝った機能」を持った「アプリ」に比重を置きがちになる。もちろんそれはそれでおもしろい。
しかし広重の感触としては、「アプリ」よりも「単純な機能」の方が、威力があるように思われる。たとえば、ただ「カメラ」の映像をプロジェクタで映すだけ、とか、ただ「手書きの文字」を映すだけ、とか、ただ PDF を拡大縮小しながら映すだけ、とか、である。
学校の先生が自分で構成した自分の授業の中で、「あ、これを大きく映して見せよう」と思った瞬間に、こういう単純な機能が、それを実現してしまう。
あまりに簡単なため、こういう場で発表しても「ウケない」。しかしその「ウケない」ほど当たり前そうに簡単にできてしまう、ことこそが、大変なことなのだ。
講演発表のステレオタイプ的シナリオが、「すごい困難にぶち当たった→大変な努力をした→難しいことを身につけた→ついに困難を乗り越えて解決した→すごーい!」という「激アツ系」のものであり、「簡単なんで〜、すくできます。ホラ、もうできました。おしまい」ではウケない。
だがこの簡単なことも、実はひそかに価値のあることだ。ウケないけど。
別な観点から。この手の教育用「アプリ」は、既にパソコンの世界で膨大に作られている。しかし、実際の授業で頻繁に使われるか、というと、おそらく、それほどでもない。存在自体も、なかなかポピュラーにならない。何かが合わないのである。
理由はいろいろ考えられるだろうが、一つには、「アプリ」が「構成されすぎている」というのもありそうだ。
たくさんの機能をもった「構成された」アプリには、その作者が考える「道筋」のようなものが内在していて、その道筋にあった授業でなければ、そのアプリは使えない。
それぞれの先生が工夫して考えた、特徴のある独自の授業は、おそらく、そのような他人の考える道筋に、必ずしも当てはまらない。
そこで必要とされるのは、おそらく、単純な機能だけを持った「授業の部品」であろう。「構成」は、授業をする先生自身が行うのである。
これらが「単純な機能」が威力を持つ、と考える理由である。
ゼミでも口頭で説明して学生に伝えようとしたが、うまく言えなかった。はたしてどのぐらい伝わったか……というところである。おそらく、これは「わかりにくい」ことなのだろう。
考えてみれば、リアル世界の工業製品でも、実は同じことが言える。完成した「製品」はどうやって使うかわかりやすいが、「部品」だけ、たとえばネジ1本だけ、だと、どこにどうやって使うのか、普通の人にはわかりにくい。実際にその部品でモノを作ったことのある人だけが、わかる。
最後に。簡単、簡単、と言ってきたが、まだどうしても簡単にならない部分が残っている。
それは「2. 機材とネットワーク構成」の部分である。このいわば「インフラストラクチャー」を作り上げる部分は、まだまだ「をたく」の世界である。
ここだけは、特別に詳しい人か、専門業者に作り上げてもらっておく必要がある。
ネットワークは「他と接続する」ことなので、「技術」に詳しいだけではうまくいかず、つなげる相手との「専門技術分野でのコミュニケーション」もできなくてはならない。
なにはともあれ、皆さん、おつかれさまでした。楽しかったねぇ。